働き方改革や新型コロナウイルス感染症などの影響により、オフィスのフリーアドレスが注目されています。フリーアドレスにはさまざまなメリットがあり、導入後にさまざまな効果を得ることができます。一方でフリーアドレスには注意点もあり、導入手順や注意点を把握しないまま運用を開始すると、メリットを感じられない可能性もあります。この記事では、フリーアドレスの基本知識から導入手順、得られるメリットや注意点を解説します。
目次
フリーアドレスとは
フリーアドレスとは、オフィス内で従業員が固定された自席をもたず、ワーキングスペース内で自由に席を選び仕事をすることです。フリーアドレスの意味は、従来のオフィスのような自席という概念をなくして、「自由(フリー)な所在(アドレス)」となります。
また、フリーアドレスにも大きなテーブルにイスを並べるカフェスタイル、従業員が自分の業務用パソコンや端末を持ち歩き、空いている席を選ぶスタイルなどがあります。書類や業務に必要な道具は、個人に割り当てられたキャビネットに収納します。
フリーアドレスが注目されている背景
フリーアドレスが注目されている理由にはどういったものがあるのでしょうか。かつては、フリーアドレスの導入は困難ともいわれていました。近年になりフリーアドレスが注目され、導入企業が増えている背景を解説します。
働き方改革の影響
政府が推進している働き方改革では、オフィスに出社することなく働けるテレワークが推奨されています。テレワークの普及でオフィスに出社する社員が減ると、新しいオフィスの在り方が求められます。
フリーアドレスはテレワークとの相性がよく、オフィスでの稼働人数に合わせてスペースを有効活用できるオフィス形態です。また、チームや部署の垣根を超えた交流から、他部門や社内外の人々とのコミュニケーション頻度を増やすこともできるため、自由な発想の創出にもつながります。自由な雰囲気は、従業員のモチベーション向上にも貢献します。
クラウド化・ペーパーレス化の影響
フリーアドレスは1987年に試験的に導入されてから、年代を追うごとに企業に浸透しています。初期のフリーアドレスを「フリーアドレス1.0」と呼びますが、当時はクラウドシステムの利用やペーパーレス化などの課題が残りました。
しかし、近年ではペーパーレス化が進み、クラウドシステムの導入やスマートフォンなどのテクノロジーが発展したことで、フリーアドレス導入へのハードルが低くなっています。この状況を「フリーアドレス2.0」と呼び、再び注目を集めています。
新型コロナウイルス感染症の影響
新型コロナウイルス感染症の感染拡大にともない、テレワークを導入する企業が増えました。さらに、オフィスへの出社時にはソーシャルディスタンスの確保など、オフィスのレイアウトを変更することも検討されています。
フリーアドレスならば、出社する人数の制限やソーシャルディスタンスを保ったデスクの配置が可能です。感染症の影響を避ける機会として、フリーアドレスを導入した企業も存在するでしょう。
フリーアドレスのメリット・効果
ここでは、フリーアドレスのメリットや効果を詳しく見ていきます。フリーアドレスが自社にどのようなメリットをもたらすのか、それぞれの内容を確認してください。
従業員同士のコミュニケーションの活性化
フリーアドレスの導入により、他部署など関わりの少なかったメンバーとの交流が生まれます。その結果、部署やチームに限定した情報交換だけではなく、幅広い意見や知識の吸収が可能になります。全社的なコミュニケーションの活発化も期待できるでしょう。
他部署との関わりが増えることで、社内に限定していたコミュニケーションの壁を取り除くことが可能になります。つまり、従来では部署やチームに限定したコミュニケーションが中心でしたが、フリーアドレスでは、部署やチームだけでなく、社内外の垣根を超えた積極的なコミュニケーションが可能になります。
新たなイノベーションには、社内外を問わず自由な意見や発想が重要になります。フリーアドレスは社内・社外の双方でコミュニケーションが可能になるため、さらなるコミュニケーションの活性化や、新たな価値を見出すきっかけにつながるかもしれません。
従業員の主体性の向上
従来の従業員ごとに固定されたデスクでは、毎日決まった場所で決まった仕事をこなすルーティンが基本となりますが、フリーアドレスでは、自らの意思で場所を選んで仕事をするため、主体的な行動にもつながるでしょう。
また、周囲に着座する人が変われば、新たな発見や交流が生まれるでしょう。
新たなアイデアの創出
部署やチームなど固定された座席では、話し合うメンバーが限定的となり、新たなアイデアが生まれにくいものです。フリーアドレスなら、さまざまな人との交流がもてるため、幅広い意見を聞くことができます。これらの活発なコミュニケーションから、新たな考え方や価値を取り入れることで、独自性のあるアイデアの創出が期待できます。
総合的なコストの削減
テレワークやフレックスタイム制など、柔軟な働き方をする従業員が多くなると、フリーアドレスでは必ずしも従業員全員分のデスクやイス、備品を用意する必要がなく、物品購入のコスト削減が可能です。さらに、最小限のデスクやイスの設置で済むため、スペースコストの削減につながります。
また、従来のオフィスワークでは、インターネット接続は有線LANの使用が主流でした。しかし、フリーアドレスでは有線LANに代わり無線LANを使ったインターネット接続が中心となるため、LANケーブルが必要ありません。その結果、通信面のコスト削減にも貢献することができます。
フリーアドレスは自分専用の座席ではないため、書類の保管や持ち運びがしにくいです。結果としてペーパーレス化への対応が必要ですが、用紙コストの削減を実現できます。
オフィス内の整理整頓
フリーアドレスは、ペーパーレスに対応することが多くなり、不要な紙の資料や文房具をデスクにおく必要がなくなります。書類を使用しても自分専用のキャビネットに保管します。
デスク周りに余計なものをおく必要がなくなれば、必然的にオフィス環境がきれいになります。また、デスクやイスの配置を最小限にすれば、オフィス内がスッキリとします。
フリーアドレスのデメリット・注意点
フリーアドレスにはデメリットや注意点もあります。デメリットや注意点を把握して、最適な内容でフリーアドレスを導入することが大切です。
従業員の居場所がわかりにくい
フリーアドレスは各々が好きな場所を選ぶため、誰がどこにいるのか把握しにくく、直接的なコミュニケーションが取りにくくなります。
業務上、緊急の連絡が必要となる可能性もあるため、環境整備が必要です。チャットツールの導入やコミュニケーションの方法、ルールの取り決めが重要です。
会話などが集中力の妨げになる場合も
フリーアドレスは、自由なコミュニケーションが生まれやすい反面、周囲の会話などが気になる環境でもあります。会話の声や雑音が気になると、仕事に集中できなくなり、生産性に影響する可能性も考えられます。
各々が仕事に集中できるようなレイアウトの工夫や、仕切りで区切られたプライベートブースを設けることも必要です。
セキュリティ対策が必要
フリーアドレスは情報漏洩などの観点からオフィスへの入退館、ワーキングスペースや業務用パソコン・端末の使用者を管理する対策が必要です。特に従業員の出入りが頻繁に起こる場合は、セキュリティ面の課題が多くなります。従業員のセキュリティ教育を実施して、オフィスの使用ルールを徹底することが大切です。
導入コストが必要
フリーアドレスの運用はコスト削減に効果がありますが、ネットワークの無線化やレイアウトの変更などさまざまな導入費用がかかります。また、個人用キャビネット、業務用パソコンや端末、勤怠管理システムなども必要になるでしょう。フリーアドレスの導入後はメリットをもたらしますが、導入時のコストも十分に検討してください。
フリーアドレスが向いている企業・部署と向かない企業・部署
フリーアドレスはすべての企業や部署に導入できるわけではありません。以下でフリーアドレスの向き不向きについてご説明します。
フリーアドレスが向いている企業・部署
フリーアドレスはすでにIT化が進んでいる企業に向いています。特にパソコンだけで仕事ができるソフトウェア開発やWeb関連などの企業には向いているでしょう。部署を限定すると、新たなアイデアの創出が求められる企画部門やマーケティング部門などが向いています。
また、働き方改革や感染症対策に積極的に取り組みたい企業もフリーアドレスが適しています。
フリーアドレスが向かない企業・部署
フリーアドレスは経理部門や管理部門にはあまり向いていません。理由は少人数で専門的な業務をおこなうため、セキュリティを厳重に管理する必要があるからです。また、さまざまな機器や道具を使う作業が多い場合は適しません。
ほかにも人事異動が少ない会社や規模が小さい会社、紙ベースの仕事が多い場合もフリーアドレスは不向きです。
フリーアドレスの導入手順
フリーアドレスを導入する際は、以下の5つの手順を参考にしてください。それぞれ解説します。
導入範囲を検討する
まずはフリーアドレスの導入範囲を決めます。全社的に行うのか、もしくは一部の部署やチームに限定するのかを検討しましょう。フリーアドレスの導入範囲は、予算やフリーアドレスの向き不向きから判断しましょう。失敗を防ぐには、一部の部署やチームから導入することがポイントです。
座席数を検討する
座席数は削減できる数を算出します。たとえば、「外回りが多い」「テレワークが中心」という従業員はオフィス出社が少ないため、削減してよいでしょう。なお、座席の削減目安は従業員数の3割ほどです。
座席の運用方法を検討する
フリーアドレスは、基本的に従業員が自由に座席を選べます。ここで注意したいのは、コロナ禍によりオフィス内で感染者がでたときに濃厚接触者などの特定が必要であることです。
運用担当が座席の使用状況を把握できるような仕組み作りや座席の利用を制限するなどの対応が求められます。
感染症対策を含めたレイアウト変更・環境整備
新型コロナウイルス感染症などの感染症対策として、デスク周りにパーテーションや消毒液の設置が必要です。ソーシャルディスタンスの観点から座席の間隔も十分に検討してください。検温器の設置など、感染症対策に必要な物品も購入します。
さらに、ネットワークの設定やキャビネットの設置など、必要な環境整備を行いましょう。
試験運用から本格運用へ
レイアウトの変更や環境整備が完了したら、期間を定めて試験運用を行います。あらかじめ入退館、会話、飲食、整理整頓など、オフィス利用時のルールを決めておくとスムーズに運用が開始できます。
課題が見つかったら、その都度改善をして本格運用につなげてください。
まとめ
フリーアドレスはオフィス内に固定の座席を持たず、自由に席を選んで仕事をするオフィススタイルです。働き方改革やコロナ禍などにより、注目されているオフィスの在り方といえます。フリーアドレスはメリットや注意点があるため、双方を理解してから導入してください。
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