2024年12月5日

派遣社員として働くうえで、産休・育休を取得できるのか知りたい方も多いでしょう。派遣社員でも条件を満たせば、産休・育休を取得できます。
本記事では、派遣社員が産休・育休を取得するために必要な条件や手順、手当や給付などを解説します。
産休・育休を取得する際の注意点まで解説するため、出産と仕事の両立で悩んでいる方はぜひ参考にしてください。
目次
産休とは
産休とは、母親の身体を保護する観点から定められている制度を指します。
産休(産前産後休暇)は、以下の2つの制度を合わせた通称です。
● 出産に向けた準備期間である「産前休業」
● 産後に身体を回復させるための期間である「産後休業」
産休は労働基準法によって、出産する全ての女性が取得できると定められています。
派遣社員も産休を取得できる
産休は雇用形態にかかわらず、出産予定の女性が取得できる制度であり、派遣社員として働く方も産休を取得できます。また妊娠や出産、産休や育休の取得などを理由とした解雇は禁止されています。
産休を取得すると、以下のメリットがあります。
● 働き慣れた職場に復帰できる可能性が高い
● 産休中に手当や給付を受けられる
産休明けは、子育てと仕事の両立で疲弊する女性が少なくありません。働き慣れた職場であれば、新しい職場に比べてストレスを軽減できるでしょう。また職場との関係性を構築できていれば、復帰するときに部署メンバーから支援を受けられる可能性があります。
もし出産を機に退職してしまうと、再就職までにブランクができるケースがあります。職場によっては、新生児がいる女性を受け入れる体制が整えられず、受け入れられない企業も珍しくありません。産休を取得すれば、新しい職場を探す必要はなく、キャリアを中断せずに済みます。
産休明けの仕事復帰では、時短勤務に変更できるケースがあります。子育てと仕事のバランスをうまく調整しながら、ご自身に合わせたライフスタイルを導けるでしょう。
また、社会保険に加入していれば、休業中の手当が支給されます。休業期間中に安定した収入を得られるため、安心して出産に向けての準備や出産後の体力回復に集中できる環境を整えられます。
時短勤務が気になる方は、こちらの記事をチェックしてみてください。
時短勤務とは?対象者・利用方法・成功のポイントなどをわかりやすく解説
産休と育休について
産休とともに取得する制度には、育児休業(通称育休)があります。育児休業は、法律で定められた1歳以下の子どもを育てるときに利用できる休暇制度です。
また、育児休業と似ている制度として、企業が独自に定められる育児休暇があります。育児休暇は子どもの入学式・卒園式などに利用できる制度です。従業員1人につき8日以上、中小企業の場合は5日以上取得できるように努力義務が課せられています。
育児休業と育児休暇の違いは、取得義務が定められている休暇かどうかです。育児休業は国が取得を定めている制度ですが、育児休暇はあくまで努力義務のため、導入されている企業は一部に留まります。
ここからは、産休と育児休業の違いについて見ていきましょう。
制度・目的の違い
産休と育休の制度・目的には、以下のような違いがあります。
産休 | 育休 | |
制度の目的 | ・妊娠・出産した女性の健康回復 ・生まれた子どもの保護 |
育児をする労働者の仕事・家庭の両立を支援 |
定められている法律 | 労働基準法 | 育児・介護休業法 |
取得する要件 | 出産する女性 | 一定の条件あり |
対象者 | 出産をする女性のみ | 子どもを育てる両親 |
育休を取得するための一定の条件とは、休業開始予定日の1ヶ月前までに申請することや、子どもが1歳6ヶ月になる前日までに労働契約期間の満了が明らかでないことなどです。
期間の違い
産休と育休で取得できる休暇期間の違いは、以下のとおりです。
休業の種類 | 期間 |
産前休業 | ・出産予定日を含む6週間前 ・多胎妊娠の場合は14週間前 |
産後休業 | 産後の翌日から8週間の休暇 |
育児休業 | 産後休業の翌日から子どもが1歳の誕生日を迎えるまで |
産後パパ育休 | 子どもが生まれてから8週間以内に4週間 |
実際の出産日が出産予定日よりも遅れ、産前休業が6週間より延びると、超過分も産前休業になります。
法律によって身体を回復させるために、出産後8週間は働くことが禁止されています。ただし、本人の希望により早く働きたい場合は、医師の許可が得られれば、産後6週間以降から復職できます。
また育児休業は本人の希望があり、一定の条件を満たした場合は、子どもが1歳6ヶ月または2歳まで延長できます。産後パパ育休とは育児休業とは別に、男性が4週間の休暇を2回に分けて取得できる育児休業制度です。
さらに、両親がともに育児休業を取得した場合、育児休業を取得できる期間が1歳2ヶ月まで延長されます。ただし、取得できる期間が延長されるだけで、休業を取得できる最大日数が1年であることは変わりません。
派遣社員が産休・育休を取得する条件
派遣社員が産休・育休を取得するためには、条件を満たす必要があります。ここからは、産休・育休を取得するための条件について見ていきましょう。
前提条件
産休・育休を取得する条件は、以下のとおりです。
● 取得するときに雇用契約が続いている
● 雇用保険・社会保険に加入している
雇用保険または社会保険に加入していない場合、制度を利用できない可能性があります。
雇用保険・社会保険に加入する主な条件は、以下のとおりです。
● 派遣先企業で勤務開始時から最低31日間働く見込みがあり、かつ週20時間以上働く
● 1週間の所定労働時間が正社員の4分の3以上である
正社員の4分の3以上の所定労働時間は、一般的に週30時間以上とされています。ただし、人材派遣会社によっては上記の条件だけでなく、派遣社員が下記の条件を全て満たせば社会保険に加入できます。
● 人材派遣会社の社会保険被保険者数が常時101名以上である
● 契約期間が2ヶ月を超える見込みがある
● 年収が106万円以上である
● 学生ではない
マンパワーグループは、社会保険と雇用保険の適用事務所です。
産休取得の条件
出産予定の派遣社員が産休を取得するための条件は、出産予定日の42日前、多胎妊娠の場合は98日前までに雇用契約を締結していることです。
産休は派遣会社に申請する必要があるため、妊娠が判明したらできるだけ早く伝えましょう。
育休取得の条件
育児休暇を取得する条件は、以下のとおりです。
● 休業開始予定日の1ヶ月前までに申請する
● 子どもが1歳6ヶ月になる前日までに労働契約の期間が満了することが明らかでない
派遣の労働契約が産休前後に更新されるケースの要件は、更新後の契約が子どもが1歳6ヶ月になる前日までに満了しないことです。
ただし、育児休暇を取得するときには、労使協定を締結しているかどうか確認しましょう。労使協定とは、企業や人材派遣会社などの使用者と労働者で締結する協定です。労働者とは、以下のどちらかを指します。
● 労働組合があるケース:事業所の労働者のうち過半数の方以上で組織する労働組合
● 労働組合がないケース:過半数の労働者を代表する方
労使協定が締結されている場合、以下のいずれかに該当すると育休を取得できない可能性があります。
● 入社後1年未満
● 育休を申し出る日から1年(1歳以降の休業の場合は6ヶ月)以内に雇用関係が終了
● 1週間あたりの所定労働日数が2日以下
派遣社員の場合、同じ人材派遣会社から1年以上仕事の紹介を受けていなければなりません。
産休・育休の申請から職場復帰の流れ
派遣社員が産休・育休を取得したあとに、職場復帰するまでの流れは以下のとおりです。
● 派遣会社へ報告する
● 必要書類を提出して申請する
● 産休期間に入る
● 仕事へ復帰する
それぞれの流れやポイントについて解説します。
1.派遣会社へ報告する
はじめに、雇用主である派遣会社へ妊娠の報告や出産予定日、産休と育休取得の意思などを報告します。また入院や業務中の休憩が必要といった医師からの診断内容を派遣会社に伝えましょう。派遣会社と派遣先企業が相談し、業務内容・勤務時間の変更など必要な措置を取ります。
派遣会社の担当者に報告を終えてから、派遣先企業に伝えます。実際には、派遣会社の担当者から派遣先担当者へ連絡するケースがほとんどです。
2.必要書類を提出して申請する
産休を申請する際には、派遣会社が指定する書類に必要事項を記入して提出します。
育休は申出期間が休業開始予定日の1ヶ月前までと法律で定められているため、産休と同時に申請しましょう。また、復職に備えて、時短制度や子どもの看護休暇などの制度をあらかじめ質問しておくことをおすすめします。
3.産休・育休期間に入る
産休の期間は産前休業期間は6週間、産後休業期間は8週間です。育児休業は、子どもが原則1歳になるまでの期間と定められています。
4.仕事へ復帰する
産休・育休後に仕事へ復帰するときは、あらかじめ派遣先企業と以下のことを決めましょう。
● 仕事へ復帰する時期
● 復帰後の勤務条件
仕事へ復帰する時期は保育園に入園する4月か、ならし保育が完了するゴールデンウィーク空けがほとんどです。派遣先企業の人員状況にもよるため、タイミングとして戻りやすい時期を相談します。
また復帰する前に、時短勤務や勤務日数の変更などの勤務条件を相談してください。条件によっては、新しい派遣先企業を紹介してもらえる可能性があります。
派遣社員が産休・育休中に受けられる手当や給付
派遣社員が産休・育休を取得すると受けられる手当や給付は、以下の3つの制度です。
● 出産手当金
● 出産育児一時金
● 育児休業給付金
それぞれの制度の概要や計算式について詳しく解説します。
出産手当金
出産手当金は、派遣社員が産休中に健康保険組合から支給される手当です。出産手当金が給付されるには、以下の3つの条件が必要です。
● 出産のために仕事を休んでいる
● 健康保険に加入している本人が出産する
● 産休中に給与が支払われていない
支給額は1日あたり「標準報酬月額÷30日×2/3」です。標準報酬月額とは、受け取る給与を一定の幅で分けた金額を指します。受け取る給与とは、基本給以外の残業手当や通勤手当などを含めた税引き前の給与です。
たとえば、標準報酬月額が20万円の場合の一日当たりの出産手当金は、以下のとおりです。
20万円÷30日×2/3=4,445円
出産手当金の支給される期間は「出産予定日前42日+産後56日+出産予定日から遅れた出産日」です。
4,445円×(42+56)=435,610円
標準報酬月額が20万円の場合の出産手当金は、435,610円です。
※参考:全国健康保険協会ホームページ
出産育児一時金
出産育児一時金は、保険適応外である出産に伴う費用を軽減する制度です。出産する本人、または配偶者が健康保険に加入していれば、出産育児一時金が支給されます。支給される金額は、子どもを1人出産すると42万円、多胎出産では子どもの人数分になります。
ただし、産科医療補償制度に未加入の医療機関で出産した場合に支給される金額は、40.8万円です。
※参考:全国健康保険協会ホームページ
育児休業給付金
育児休業給付金は、育児休業を取得するときに受け取れる手当を指します。原則、育児休業給付金の金額は、休業前の給与の67%に相当する額です。育休開始後181日目以降は、50%相当額の給付を受けられます。
支払われる給与の金額によって、育児休業給付金の金額は、以下の表のように異なります。
企業から支払われた賃金の金額 | 育児休業給付金の金額 |
13%(181日以降30%)以下 | 休業開始時賃金日額×支給日数×67%(181日以降50%) |
13%(181日以降30%)を超えて80%未満 | 休業開始時賃金日額×支給日数×67%-賃金 |
80%以上 | 支給なし |
ただし、2024年度の1日あたりの上限額は15,190円、下限額は2,869円と定められています。2025年7月までの30日間の給付金は、以下のとおりです。
【給付率67%のケース】
● 支給上限額 315,369円
● 支給下限額 57,666円
【給付率50%のケース】
● 支給上限額 235,350円
● 支給下限額 43,035円
※参考:育児休業給付の内容と支給申請手続
派遣社員が産休・育休中に支払う税金や社会保険料
派遣社員が産休・育休を取得した場合、税金や社会保険料の支払いが気になる方も多いはずです。ここからは、産休・育休期間の税金について解説します。
所得税
所得税とは、1年間分の給与や商売で稼いだ収入に対してかかる税金です。所得税を計算する際の1年間とは、1月から12月を指します。産休中の派遣社員に対して、派遣会社から給与の支払いがない場合は、所得税は発生しません。
なお、産休・育休中に支給される出産手当金や出産育児一時金、育児休業給付金は非課税であり、所得税の対象外です。
住民税
住民税とは、前年1月から12月までの1年間の収入を基準として、翌年6月から1年間分を分割で支払う税金です。産休中で収入のない派遣社員も前年の給料に応じて、納税する義務があります。
通常、住民税は給与天引きで納税していますが、産休中は給与の支払いがないため、ご自身でコンビニや銀行などで納税しなければなりません。
社会保険料
社会保険料とは、健康保険や厚生年金、雇用保険などの保険料です。産休中の社会保険料は1ヶ月単位で金額が免除されます。免除される期間は、産休を開始した月から終了する前月までです。
社会保険について詳しく知りたい方は、以下の記事をご確認ください。
社会保険とは?年金との関係や加入条件、種類やメリットまで解説
派遣社員が産休を取得する際の注意点
派遣社員が産休を取得する際には、以下の注意点があります。
● 産休育休後の復職先が変わることもある
● 産休取得・復帰について早めに相談をする
それぞれの注意点について詳しく解説します。
産休育休後の復職先が変わることもある
派遣社員が産休・育休を請求する先は、派遣先ではなく派遣会社です。産休・育休期間の間に、派遣先企業と派遣会社の契約が終了し、復職できない可能性があります。
復職できない場合は産休育休後の働き方を見直し、時短勤務や自宅から近い派遣先への就業を希望することも可能です。
産休取得・復帰について早めに相談をする
派遣会社に対して、妊娠の報告や産休取得の相談が遅くなると、結果として派遣先の会社に迷惑をかけてしまいます。早めにわかっていれば、業務を引き継ぐ後任の人材を探し、体調不良の際には、派遣先と業務内容の調整ができます。産休取得、復帰については派遣会社に早めに相談しておきましょう。
また、復職後の働き方に不安を抱えている場合は、派遣会社に相談すると、考慮した働き方を提案してもらえます。
まとめ
産休は、雇用形態にかかわらず、出産を控えた女性の誰もが取得できる制度です。派遣社員も産休を取得することで、産後の職場探しや雇用への不安を軽減できます。産休中に受けられる手当や給付、免除になる制度もあり、安心して出産に臨めるでしょう。
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